令和4年度第2号 「いじめ」と損害賠償責任について(沼田徹 委員)

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ページ番号1003591  更新日 2025年1月22日

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「いじめ」と損害賠償責任について

「いじめ」によって、被害者である子どもに損害が発生したとき、加害者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます。
例えば、心身症を発症して不登校になってしまったというケースでは、損害として、治療費、通院交通費、通院付添費(親の通院付添のための費用)、慰謝料(精神的苦痛を慰謝するため支払われるべき金銭)等の発生が考えられます。

損害額が大きくなるのは、被害者が自死を遂げたような場合です。被害者が亡くなると、その逸失利益(死の結果がなければ将来に渡り得られたであろう利益)、死亡慰謝料、両親の慰謝料、葬儀関係費用などで請求額が数千万円に上ります。
損害額がさらに大きくなるのは、例えば、被害者が校舎の屋上から飛び降り、四肢麻痺や脳機能障害など、身体に重い後遺障害が残ったようなケースです。この場合には、労働能力の喪失による逸失利益、後遺障害慰謝料のほか、平均余命の期間に渡る職業介護人による将来介護費や将来治療費等が必要となって、総損害額が億単位になることも珍しくはありません。

交通事故の場合には、自賠責保険加入が義務付けられ、さらに、損害額が大きくなることへの備えとして、対人賠償無制限の任意損害保険に加入している方が多いでしょう。対人賠償無制限の任意保険に加入していれば、不幸にして加害者となって甚大な損害を発生させても、被害者の損害は全額損害保険から支払われ、加害者が賠償金を自己負担する必要はありません。

ところが、いじめによって被害者に多大な損害が発生した場合には、原則として、加害者自らが賠償金を工面して支払わねばなりません。日常生活に起因する偶然の事故による法律上の損害賠償責任を補償する個人賠償責任保険という損害保険がありますが、これに加入していたとしても、いじめの事案では、偶然の事故とは言えず、対象外とされることが多いと考えられます。
したがって、重大な結果が発生した場合、加害者の損害賠償責任は、一生涯に渡るような大きな負担となり得るのです。

以上

イラスト:本

子どもの権利擁護委員 沼田 徹

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