令和4年度第1号 「いじめ」と法的責任について(沼田徹 委員)
「いじめ」があったとき、誰が、どのような法的責任を負うのでしょうか。
「いじめ」があったとしても、法的責任は、一様ではありません。そのいじめの具体的な中身、すなわち、行為のあり様、被害の有無や程度によって大きく変わります。
この観点から「いじめ」は、大きく3つに分類することができます。
第1は、いじめ防止対策推進法で定義をされた「いじめ」で、最も範囲が広いものです。これは、行為を受ける側の子どもが心身の苦痛を感じれば全て「いじめ」となります。行為者に加害の認識は必要ありません。あくまでも、行為の受け手がどう感じたかという主観的な基準でいじめの有無が決まります。
第2は、民事上の不法行為に基づく損害賠償責任が発生するものです。第1の「いじめ」が成立したからといって、当然にこの民事上の損害賠償責任が発生するものではありません。第1の「いじめ」のうち、行為者に故意や過失があり、行為の受け手に具体的な損害が発生し、社会的相当性を逸脱する違法な権利侵害行為であると認められるものだけについて、民事上の損害賠償責任が認められます。
第3は、犯罪に該当する行為であり、刑事責任や少年法に基づく処分が問題となるものです。第2の民事上の損害賠償責任が発生するからといって、当然に犯罪に該当するとは言えません。民事上の損害賠償責任が発生する「いじめ」のうち、刑法などの法律で定められた犯罪が成立するための要件に該当するものだけが、刑事責任や少年法に基づく処分の対象となります。
例えば、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、恐喝罪、強要罪、侮辱罪、名誉毀損罪、器物損壊罪などの犯罪に該当するいじめです。そもそも犯罪とは、違法性が強く、権利侵害の程度も高い行為を類型化して処罰することとしたものですから、このいじめは、3つの分類のうちで、最も違法性や権利侵害性の高い、悪質なものと言えます。
「いじめ」の法的責任を論じるとき、民事上の損害賠償責任を問題としているのか、刑事責任等を問題としているのか、そのいずれも問題にはならない場面なのか、段階を分けて考える必要があります。
以上
子どもの権利擁護委員 沼田 徹
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