なみおか町史コラム(18)
〜年縄の魅力〜
私たちの生活の様相が激しく変貌するなかで、神社の鳥居に毎年新しい年縄が奉納されてあるのをみると目の前が明るくなるような気がする。産土神を拝んで地域の安泰を願う人々の集いが、このように健全に活動していることを思うといつまでも続けられることを願ってやまない。
正月の神を迎えるために張る注連縄が、年縄である。年縄は新しい稲わらを用いて左ないに綯うものだといわれている。
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神明宮(高屋敷) |
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廣峰神社(北中野) |
注連縄は神聖で清浄な区域とほかの不浄な場所とを区分するための
標である。神社の入口に張ってある注連縄は、神の占有する清浄な境内を示す縄張りといえる。注連縄も一文字、輪ジメ、大根ジメ、
牛蒡ジメなどの形態があるが、浪岡町内の神社の鳥居に奉ってある注連縄は、どれも創意工夫が施されていて見応えがある。
例えば、高屋敷神明宮の鳥居には米俵を象徴した年縄が奉納されているが、それは素晴らしい作品である。この年縄は新しい稲わらのほかに
茅を使って米俵を作って豊作祈願をしている。蘇民将来の話ともつながりのある茅を刈り取って、丁寧に手入れをして多人数が力を合わせて米俵に作り上げている。その上、小形の米俵を1俵載せてある。縄を組んでの作り上げは見事なものである。また、鳥居の
貫下に飾ってあるジャバラや飾りものは、左右対称にして手の込んだ編み模様に作ったもので目を見張るような美しさであり、これは町内の多くの神社でも見ることができる。
年縄の両端は鳥居の2本の柱にしっかりと結ばれているが、その部分に松竹梅を割木に立てた門松が一個ずつ奉ってある。その巧みな縄の結び様は、小形の米俵と共に一見の価値があると思う。年縄を貫と柱に力強く巻いてあるが、その結びの美観は、杉沢の賀茂神社と白山神社、北中野の廣峰神社、
樽沢の山神社、吉内の稲荷神社などの鳥居でも十分に堪能できる。
町内各神社を参拝しながら、正月に奉納した年縄作りの巧妙な技を多くの人が嘆賞してくれることを望んでいる。
【町史編集委員 三浦貞栄治】
『広報なみおか』平成14年(2002)10月1日号に掲載