あおもり今・昔104

シクサ刈り

 青森平野周辺の各集落では、水田の作業が一段落した7月中ごろから8月のお盆過ぎにかけて、八甲田山麓に広がる採草地で「シクサ刈り」が始まります。
 「シクサ」とは馬に与える飼料のことで、これを刈る採草地は「クサカッパ」(草刈り場)、「クサヤマ」などと呼ばれていました。各集落では、共同の採草地を持っており、春先の火入れや、草刈りに入る前の道路の整備などの共同作業が行なわれました。
 草を刈る場所はあらかじめくじ引きで決められ、日にちを決めて一斉に草刈りに入ります。草刈りは暑い時期のきつい作業で、それぞれの農家の若者の仕事となりました。
草刈り鎌
▲草刈り鎌(普通の鎌より柄が長い)
 早朝に家を出、午前中の涼しい時間に仕事を行いました。昼の休みはゆっくりし、山で食べる昼食は一番の楽しみでした。弁当はワッパに詰めたご飯、小さなワッパには塩マスか塩ニシン・身欠きニシンなどのおかずを入れました。
 また、味噌・ナス・ネギ・タマネギや、これを煮る鍋を持参し、カヤキナベを作って食べる楽しみもありました。
 草刈りに使う鎌は、普通の草刈り鎌より厚い丈夫なもので、柄も長いものを使いました。作業は斜面の下から上に向かって刈って行きました。刈った草は、その場で乾燥させました。数日おいて、乾燥したらトッケラカスといって、鎌の先で反転させ、完全に乾燥させました。
 山からシクサを下ろすときには、馬の背で運びました。ワラの穂の部分を結び合わせたシナゲというものでシクサを3か所しばり、束にしました。これを「シクサをマロク」と言いました。シクサ1束を1マロとし、これを6つで1ダンと数えました。馬の背の1ダン、自分の背に1マロを背負って山から下ろし、農家の敷地内に保管して冬場の飼料としました。
【民俗部会執筆編集員 昆政明】

※『広報あおもり』2002年7月1日号に掲載


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