なみおか今・昔66

弘前藩庁日記に浪岡を読む(11)

 いよいよ師走、農作業もほとんど終わりました。今回はお殿様に年貢を納めていた時代の、米づくり作業暦をご紹介しましょう。現在と比較して下さい。「弘前藩庁日記」寛保2年(1742)12月21日(約260年前)の条には、

「弘前藩庁日記」寛保2年12月21日条
「弘前藩庁日記」寛保2年12月21日条
  一 郡奉行が申し出た。
   一 種ひやかし二月廿二日
   一 田打初  三月五日
   一 種蒔初  三月廿二日
   一 くれかき初四月十一日
   一 田植初  四月廿三日
   一 田草取初 五月十四日
   一 出穂初  六月廿四目
   一 稲刈初  八月廿八日
   一 稲村納  九月十七日

 右は、当戊年の耕作作業が始められた月日である旨、(各地域から)申し出があったので、半紙に清書して報告する。

 稲作は藩の収入に直接結びつくものであり、役人は毎年このような調査を行っていました。作業開始の月日をみると、ずいぶん早いように感じますが、旧暦であることに注意しなければなりません。ちなみに、この広報が発行された12月1日は旧の11月6日にあたります。それでは前にあげた作業開始の月日を新暦に直してみましょう。
 
稲刈を終わった水田風景
稲刈を終わった水田
 種ひやかしは3月28日から。よい種をえらび発芽を促進させるのです。田の打ち始めは4月9日。備中鍬で頑張りました。苗代に種を蒔いたのが4月26日。くれかきは5月15日から。田の土を細かくします。田植えは5月27日から始まりました。そのあと田草取りが6月16日から。除草剤を田に投げるだけという訳には行きません。
 7月25日出穂。稲刈は9月26日から行われています。田に干していた稲を家に運び始めたのが10月15日。農作業には馬が重要な役割を果しました。このあとも作業は続きます。そして、年貢の納入が待っているのです。五本松の加茂神社を舞台とした農書『案山子(かかし)物語』は、11月中に年貢を納めるように勧めています。寛保2年の天候は比較的順調でした。『永禄日記』はこの年の作柄について「春夏無事田畑豊作」と記しています。

【浪岡町史編さん室長 佐藤仁】

『広報なみおか』平成12年(2000)12月1日号に掲載


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