あおもり今・昔133−自然よもやま話−

八甲田山のホシガラス

 八甲田山の四季は新緑から樹氷に至るまで多彩であり、豊かな自然は訪れる人を魅了してやまない。
 八甲田の山々をめぐっているとさまざまな高山の鳥たちに出会うことができる。メボソムシクイ・ビンズイ・カヤクグリ・ルリビタキ・イワヒバリなど。上空ではアマツバメが飛び交い、時にはクマタカの滑空も見られる。仙人岱や毛無岱辺りではウグイスが盛んにさえずり、それにあわせるかのようにカッコウが鳴く。しかし、なんといっても八甲田山で出会う機会が多いのはホシガラスであろう。ハイマツの群落やアオモリトドマツの梢などで“ガーガーガー”としわがれた大きな声で鳴いているのがホシガラスである。
ホシガラス(写真:張山喜隆さん)
▲ホシガラス(写真:張山喜隆さん)
 ホシガラスはユーラシア大陸・台湾・日本などに広く分布しているカラス科の鳥でハトぐらいの大きさがある。体全体が焦げ茶色で一面に白い斑がある。そのことからホシガラスの名があるが、高山に生息していることからダケガラスとも呼ばれている。青森県では岩木山、白神岳などにも生息しているが、やはり、八甲田山が一番であろう。亜高山帯から高山帯のアオモリトドマツやハイマツなどの実を好んで食べる。繁殖期には昆虫やハタネズミなどの動物性のものも餌にしていることも知られている。木からもぎ取った実を一定の場所に運んで食べる習性があり、登山道にホシガラスがついばんだアオモリトドマツの松笠が落ちていることがよくある。冬はやや標高の低い地方に移動する個体もあるが、低山帯や平地まで漂行することはまれであると記している図鑑もあるが、青森県では龍飛岬や尻屋岬、あるいは夏泊半島大島でも観察されている。
 田茂萢岳ゴールドラインの散策や八甲田の山々をめぐる時、雄大な景観・高山植物との出会いと共に、「カラスは黒一色」というイメージを払しょくさせるホシガラスを探す楽しみを加えてみてはいかがだろうか。
【自然部会執筆編集員 對馬昭三】

※『広報あおもり』2004年12月1日号に掲載


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