あおもり今・昔105

青森の獅子舞(踊)と後継者

 市内各地域の獅子舞(踊)について聞き取り調査をしているが、その際、聞かされることの一つに、どの保存会でも共通の悩みとして、後継者づくりをあげていることである。
 かつて市内には、荒川・大別内・高田・新城・油川・駒込・宮田・新町野の8団体が活動していたが、近年、保存継承のための後継者育成が非常に難しく、大人組どころか少年組の後継者づくりさえままにならない。小学校4〜6年生はいたとしても中学校では部活動などに追われ途中で止めてしまう状況にあるという。
小学生による「高田獅子踊」
▲小学生による「高田獅子踊」
 ところで、筆者が獅子舞と最初に出会ったのは、小学校5年生の頃であった。近所に稽古場があったので、そこへよく見に行った。「ここはわらはど(子ども)の来る所でない」とたびたび追い出されたりしたが、何回も見ているうちに少し所作を覚えることができるようになり、家に帰ってからそれを真似、食事中に頭を左右に振ったりして親によく叱られたことがあった。後年、成人として荒川獅子舞に仲間入りし、猛練習を重ねた結果、青森県芸能大会に出演できるまでになった。今考えてみると、子どもの時、身につけたことは大人になってから生かされるものだということを実感したような気がしている。
 この体験から私は、今深刻な問題といわれる獅子舞(踊)の後継者育成に、今年4月から始まった学校週五日制の休日をうまく活用できないかということを考えている。
 青森市には、青森県無形民俗文化財指定の高田獅子踊をはじめ、6地区に獅子踊(舞)が保存されている。子どもの健全な育成を家庭やそれぞれの地域で考える必要が叫ばれている今、この機会を伝統芸能の掘り起こしと後継者育成に向けたらと思っている。
【民俗部会調査協力員 穐元昭一】

※『広報あおもり』2002年8月1日号に掲載


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