あおもり今・昔64−自然よもやま話−

下湯ダム〜地質とかかわる築造工事〜

 晴れた日に青森市を南北に走る国道103号(観光通り)の跨線橋や高いビルなどから八甲田の山々を見渡すと、緩やかで平坦な北斜面が雄大に広がって見え、これを刻む渓谷も良く見えます。
 八甲田連峰に向かって、右手(西側)に見え、山々の中央に深く入り込む谷が堤川水系本流の荒川です。
 この川が山あいに見えなくなるあたりが、中流の下湯ダムのある地点です。青森市の水瓶(みずがめ)(近い将来飲料水に利用)であり、洪水防止用の防災ダムでもあるのです。
 このダムから上流は、両側が切り立った城ヶ倉渓流につながる景色のよい渓流です。下湯ダムへは、上の酸ヶ湯温泉から下りてくるコースもあります。単に名前で覚えるよりも、市内のどの跨線橋の上からでも見えるので、山全体を眺めてみて「あれが荒川、左が駒込川なんだなあ」と確認して見てください。郷土の自然を正確に理解する第一歩になります。
下湯ダム
▲下湯ダム
 荒川の中流に造られた下湯ダムのある場所は、比較的低いところに、今から1千万年も前にできた堅い岩盤で、八甲田山が噴火する以前に、その表面が長い年月(数十万年以上もの長い間)で風化され、川で削られ、砂利などが溜まった場所です。その上に、今からおよそ40万年ほど前に駒込川上流の田代平カルデラから噴出した、高温で厚さ100メートルの2枚の火砕流堆積物がこの一帯を覆ってできたものです。
 下湯ダムはこの火砕流堆積物の上に造られたものです。このダムは建設する際に、側方の地層と下の地層の隙間から水が漏れそうになるのを、大勢の工事専門家や技術者たちが、何年もかけて調査・研究を行い設計して、築造工事を完成させたという経緯があります。
 ダムの安全性は言うまでもありませんが、下流に住む住民は、「ダムは安全である」ことを信頼し、安心して暮らしています。ダムを管理する関係者のかたたちは、常に万全の状態で日夜管理しています。
 ハイキングなどで出掛けたときには、このようなことを理解して見ることも大切なことだと思います。
【自然部会執筆編集員 塩原鉄郎】

※『広報あおもり』2000年3月15日号に掲載


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