あおもり今・昔55−自然よもやま話−

天然記念物 コクガン

 鳥類がほかの動物と生態が違う点の一つに「渡り」という行動がある。
 夏季、日本に渡ってきて繁殖をする夏鳥。冬季、日本に渡来して越冬する冬鳥。春・秋の「渡り」の時期に日本に立ち寄る旅鳥。そして、一年中同じ所に生息する留鳥(りゅうちょう)(スズメ・カラス・キジなど)。留鳥のなかには冬季に移動する漂鳥(ひょうちょう)(ウグイス・ウズラなど)もいる。
 昭和46年5月に国の天然記念物に指定されたコクガンは、ガン・カモの仲間の冬鳥である。コクガンは北極圏のツンドラ地帯で繁殖し、冬季に南下する。シベリア東北部のものが北海道・青森県・秋田県・宮城県などの港湾・河川・湖沼などに渡来する。
コクガン
▲コクガン
 むつ市大湊湾は200羽を超すコクガンが毎年渡来する、全国でも著名な越冬地であるが、平内町浅所海岸や上北郡の湖沼地帯にも定期的に渡来している。近年では青森湾沿岸・上磯海岸・大畑海岸にも渡来するようになった。特に、青森湾の原別沿岸では年々渡来数が増えている。「日本野鳥の会」大阪知子さんの観察によれば、平成9年2月18日に100羽以上を観察している。これは、コクガンの餌になるアオサが豊富にあることと原別海岸がコクガンにとって安全な場所であるからなのであろう。餌付けなど人間が手を貸すことをせずに、自然のままに、そっと見守ってやることがコクガンを保護することになるのではないかと考えられる。
 コクガンは全体が黒色をした小型のガンで、首に環状に見える白い模様がレースのようで美しい。脇腹には白と黒の縞模様がある。
 野内川に渡来するオオハクチョウやカモを観察した後で、原別漁協付近に立ち寄り、アオサを食べているコクガンを観察してみてはいかがだろうか。
【自然部会執筆編集員 對馬昭三】

※『広報あおもり』1999年11月1日号に掲載


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