あおもり今・昔19

旧石器時代の青森と陸奥湾

 先史時代は、遺跡とその背景の自然環境を知ることによって、当時の世界がよく見えてくる。
 金沢大学の大場忠道教授によれば、旧石器時代の日本海は、8万5千年前から1万年前の最終氷期の間に、海面が現在より最高で120メートルほど低下したときがあったと述べている。
 そのため、日本海は閉鎖的海域となり、対馬暖流は流入せず、日本海側はより寒冷で、乾燥した気候であったようである。
三内遺跡出土の石刃石器(2点)
▲三内遺跡出土の石刃石器(2点)
 青森市周辺の当時の自然環境は、エゾアカマツ・コメツガ・チョウセンゴヨウなど亜寒帯針葉樹の緑の森におおわれ、陸奥湾もその当時は陸で、津軽海峡へと広がる青い森と清(れつ)な幾筋かの河川と湖沼が見られたと思われる。
 また、寒冷な気候のため、冬季になると津軽海峡は氷結し氷の橋ができて、ヒグマ・オオツノジカ・ヘラジカ・オオカミ・野牛・トラなどとともに、旧石器時代の人々が北海道から本州へ渡る姿が見られたものと考えられる。・・・というのは、これまで下北半島でそれらの化石動物群が発見されているからである。
 日本列島における旧石器時代の時期区分は、前期旧石器時代(13万年以前)、中期旧石器時代(13万年前〜3万年前)、後期旧石器時代(3万年前〜1万3千年前)に分けられている。
 青森市内で発見された旧石器時代の遺物は、三内丸山遺跡から尖頭器(せんとうき)3点、三内遺跡から石刃石器2点が発掘調査などによって明らかになっている。これらは、いずれも後期旧石器時代の遺物である。
【考古部会長 市川金丸】

※『広報あおもり』1998年5月1日号に掲載


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