○青森市子どもの権利条例
平成二十四年十二月二十五日
条例第七十三号
目次
前文
第一章 総則(第一条―第四条)
第二章 子どもにとって大切な権利(第五条―第九条)
第三章 子どもにとって大切な権利の保障に関する市の責務と取組(第十条―第十五条)
第四章 子どもにとって大切な権利の侵害からの救済と回復(第十六条―第二十一条)
第五章 雑則(第二十二条)
附則
青森市は豊かな青い森に抱かれたまちです。森では、木々、草花、鳥や虫など数え切れない生きとし生けるものが生まれ、育まれています。これらが互いに深く結びつき、共に支え合う森は、新たないのちのゆりかごであり続けます。
私たちは、この青森市が、生きる力みなぎる子どもが育つ大きなゆりかごであって欲しいと願っています。
そこでは、子どもと大人が育ち合い、学び合う関係が大切にされなければなりません。そのことによって、子どもは、他者を尊重しながら共に支え合い、青森市の文化や伝統を受け継ぎ、未来を切り開いていくことができるのです。
日本は、世界の国々と児童の権利に関する条約を結び、子どもだからこそ認められるべき権利を保障し、自分らしく生きることを大切にすると約束しています。
市は、この条約に基づき「子どもに関係のあることを行うときには、子どもにとって今もっとも良いことは何かを第一に考える」という「子どもの最善の利益」(同条約第三条)を基本理念として、子どもが健やかに育つための環境づくりを進めてきました。
市が設置した青森市こども委員会の子どもたちは、子どもの権利について学ぶ中で、「人はそれぞれ個性をもち、誰もが大切な存在として同じところ、違うところを認め合うことが大事である」、「大人は、子どもの意見に最後まで耳を傾けてほしい」、「ちょっとしたことでも、『あなたには、こういう良いところがある。』と言ってほしい」と宣言しています(平成二十三年三月子ども宣言文)。
私たちは、子どもが他者と共に生き支え合う市民として成長する青い森のまちづくりをめざし、子どもの権利を保障することを表明し、この条例を制定します。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、子どもが愛情をもって育まれ、毎日をのびのびと生き、自分らしく豊かに成長し、発達していくことができるよう、子どもにとって大切な権利の保障を図ることを目的とします。
(定義)
第二条 この条例で、次に掲げる用語の意味は、それぞれ次に定めるとおりとします。
一 子ども 十八歳未満の人その他これと等しく権利を認めることが適当であると規則に定める人をいいます。
二 大人 過去に子どもであった全ての人をいいます。
三 保護者 親や親に代わり子どもを養育する人をいいます。
四 育ち学ぶ施設 保育所、学校、児童養護施設その他子どもが育ち、学ぶことを目的として通園し、通学し、入所し、利用する施設をいいます。
(基本的な考え方)
第三条 子どもの権利の保障は、次の基本的な考え方に従って進められなければなりません。
一 子どもの最善の利益を優先して考えること。
二 子ども一人一人が権利の主体として尊重されること。
三 子どもの成長と発達に配慮した支援が行われること。
(大人の責務)
第四条 保護者は、子育ての第一の責任者として、子どもの権利を尊重しなければなりません。
2 育ち学ぶ施設の関係者は、子どもが自分らしく成長し、発達していくために育ち学ぶ施設が大切な役割を持つことを認識し、子どもの権利を尊重しなければなりません。
3 地域住民は、地域が子どもの成長と発達にとって重要な場であることを認識し、子どもの権利を尊重しなければなりません。
第二章 子どもにとって大切な権利
(子どもにとって大切な権利の保障と互いの権利の尊重)
第五条 子どもには、成長し、発達していくために、この章に定める大切な権利が保障されなければなりません。
2 子どもは、自分の権利が尊重されるのと同じように、他人の権利を尊重しなければなりません。
(安心して生きる権利)
第六条 子どもには、安心して生きるために、次のことが保障されなければなりません。
一 命が守られ、平和で安全な環境のもとで暮らすこと。
二 愛情をもって育まれること。
三 食事、医療、休息が保障され、健康的な生活を送ること。
四 いじめ、虐待、体罰その他身体的、精神的暴力と有害な環境から守られること。
五 性別、国籍、障害などを理由に、いかなる差別も受けないこと。
六 困っているときや不安に思っているときには、相談し、支援を受けることができること。
(自分らしく生きる権利)
第七条 子どもには、自分らしく生きるために、次のことが保障されなければなりません。
一 自分の個性や他人との違いを認められ、一人の人間として尊重されること。
二 自分自身の夢や希望を持ち、可能性に挑戦すること。
三 プライバシーや自らの名誉が守られること。
四 自分が思ったことや感じたことを表現すること。
五 自分にとって必要な情報や知識を得ること。
六 自分にとって大事なことを年齢や成長に応じて、適切な助言や支援を受け、自分で決めること。
七 安心して過ごすことができる時間や居場所を持つこと。
(豊かで健やかに育つ権利)
第八条 子どもには、豊かで健やかに育つために、次のことが保障されなければなりません。
一 遊ぶこと。
二 学ぶこと。
三 芸術やスポーツに触れ親しむこと。
四 青森の文化、歴史、伝統、自然に触れ親しむこと。
五 まちがいや失敗をしたとしても、適切な助言や支援を受けることができること。
(意見を表明し参加する権利)
第九条 子どもには、他人の意見を尊重しつつ、自分の意見を表明し、社会に参加するために、次のことが保障されなければなりません。
一 家庭、育ち学ぶ施設、地域などで、自分の意見を表明すること。
二 自分にとって重要な決定が行われる場合は、自分の意見を主張できること。
三 自分の表明した意見に対し、適切に配慮されること。
四 仲間をつくり、集まり、活動すること。
第三章 子どもにとって大切な権利の保障に関する市の責務と取組
(子どもの権利の普及啓発と学習支援)
第十条 市は、子どもの権利の普及を図るため、子どもと大人が共にこの条例と子どもの権利について適切に学び、理解するための機会を提供するものとします。
2 市は、毎年十一月二十日を「青森市子どもの権利の日」とし、この日にふさわしい活動を行うものとします。
(子どもの育ちへの支援)
第十一条 市は、子どもの豊かな育ちを支援するため、次のことに取り組むよう努めなければなりません。
一 子どもに健全で多様な生活体験や交流の場と機会を提供すること。
二 子どもが安心して過ごすことができる居場所づくりを進めるとともに、子どもが相談できる場と意見表明し社会に参加する機会を提供すること。
(保護者への支援)
第十二条 市は、保護者が安心して子育てができるよう支援に努めなければなりません。
2 市は、特別に支援が必要な保護者に対しては、それに応じた支援に努めなければなりません。
(子どもの命と安全を守る取組)
第十三条 市は、いじめ、虐待、体罰その他身体的、精神的暴力の防止と早期発見に努めるとともに、それら子どもの権利の侵害からの救済に必要な取組を実施するものとします。
2 市は、子どもが薬物、犯罪などの被害を受けないように、必要な取組を実施するものとします。
(子ども会議)
第十四条 市は、市政などについて、子どもが意見を表明し参加する場として、青森市子ども会議(以下「子ども会議」といいます。)を置きます。
2 市は、子どもに関わることを検討するときは、子ども会議の意見を尊重するよう努めなければなりません。
(子どもの権利の保障の行動計画と検証)
第十五条 市は、この条例の目的を達成するため、子どもの権利の保障に関する行動計画(以下「行動計画」といいます。)を定めるものとします。
2 行動計画の検証は、青森市健康福祉審議会条例(平成十八年青森市条例第四十三号)に定める児童福祉専門分科会で行うものとします。
3 行動計画の検証を実施するに当たっては、子ども会議の意見を尊重するよう努めなければなりません。
第四章 子どもにとって大切な権利の侵害からの救済と回復
(相談と救済)
第十六条 市は、子どもの権利の侵害に関する相談や救済について、関係機関などと相互に協力と連携を図るとともに、子どもの権利の侵害の特性に配慮した対応に努めなければなりません。
(子どもの権利擁護委員)
第十七条 市長は、子どもの権利の侵害について、子どもやその関係者から相談や救済の申立てを受け、その救済と権利の回復のために必要な調査、助言、支援などを行い、これらの調査などの結果を踏まえた是正措置や制度改善の勧告や要請を行うなどのため、青森市子どもの権利擁護委員(以下「委員」といいます。)を置きます。
(委員の職務)
第十八条 委員の職務は、次に掲げるとおりとします。
一 子どもやその関係者から相談を受け、助言、支援、関係者間の調整を行うこと。
二 子どもやその関係者から救済の申立てを受け、事実の調査や関係者間の調整を行うこと。
三 子どもやその関係者から救済の申立てがなくても、その救済と権利の回復のために必要があると認めるときは、事実の調査や関係者間の調整を行うこと。
五 第四号の規定により勧告や要請を行った後に、必要があると認めるときは、その是正措置などの状況に関しこれらの勧告などを受けたものに報告を求め、その内容を救済の申立てを行った人などに伝えること。
一 関係する市の機関に対し説明を求め、その保有する文書その他の記録の閲覧や提出を要求し、実地に調査すること。
二 必要な限度において市の機関以外のものに対し、資料の提出、説明その他の必要な協力を求めること。
(委員の人数、任期など)
第十九条 委員は、三人以内とします。
2 委員は、人格が優れ、子どもの権利に関し専門的知識と経験を持つ人のうちから、市長が委嘱します。
3 委員の任期は三年とし、再任を妨げません。
4 委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはなりません。委員の職を離れた後も同様とします。
5 委員は、第四項に定めるもののほか、その職務を遂行するに当たって、次のことを守らなければなりません。
一 子どもやその関係者の人権について、十分に配慮すること。
二 相談や救済の申立てなどの内容に応じ、関係機関などと協力して、その職務を行うこと。
6 市長は、委員が第四項前段の規定に違反したことが判明したときやその職務の遂行に必要な適格性を欠くと認めるときは、これを解嘱するものとします。
(勧告の尊重と委員への協力)
第二十条 第十八条第一項第四号の規定により勧告を受けた市の機関は、その勧告の内容を十分に尊重しなければなりません。
2 第一項に定めるもののほか、市の機関は、委員の職務に積極的に支援や協力をしなければなりません。
3 市の機関以外のものは、委員の職務に協力をするよう努めなければなりません。
(調査相談専門員)
第二十一条 市長は、子どもの権利の侵害について、子どもやその関係者から相談を受け、委員と連携し、必要な調査、助言、支援を行うため、調査相談専門員を置きます。
第五章 雑則
(委任)
第二十二条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定めます。
附則