なみおか今・昔85

なみおか町史コラム(15)

〜発掘調査雑考「発掘ってなに?」〜

 私が考古学を始めたばかりの時、今から1,000年前の大きな水がめを扱いました。その表面には当時の指紋がそのまま残されており、とても「感動した」ことを覚えています。骨や身に着けていたものよりも当時の人を身近に感じたからです。
 さて、私は今簡単に「1,000年前の」と表現しましたが、どうしたら新聞記事にあるように「何千年前の…」と古さが解るのでしょうか。
 時代や古さを決めるにはいくつもの方法があります。例えば、簡単なようですが下に埋まっているものの方が古い。これは解りやすいですね。
 この新旧(新しいか古いか)の判断と模様や形の組み合わせによって、縄文時代の土器から現代の茶碗まで新旧が解るようになってきました。でも、それらがいつころのものかとなると、別な方法が必要です。
五本松平野遺跡発掘調査(遠景)
五本松平野遺跡発掘調査(遠景)
 代表的なものは、「炭素」を使う方法です。植物も動物も生きているものは空気を吸い(物を食べ)ます。この空気や食べ物の中に含まれる炭素には特別なものがあり、長い年月で普通の炭素になっていきます。その度合いからおおよその年代を計るものです。そのほかにも、木を切り倒した年を年輪の成長具合から測る方法や、その他様々な方法があります。これらの結果から、新聞に発表するような時代や古さがわかるのです。
 25年くらい前までは、「発掘調査」というよりも「宝探し」と言った方が通じましたし、「大判小判は出たか」と会う人ごとに聞かれた覚えがあります。今ではテレビドラマでも考古学者が出てくるようになりましたし、三内丸山遺跡以降、遺跡に対するご理解も頂ける様になっています。
 一方で、発掘調査は何の役に立つの?という質問を時々いただきます。私たちの先人たちが自然と付き合い、どのような生活をしてきたかを調査することは、現代の生活に参考になることも多いのです。たとえば、調査で災害の痕跡が発見され、後日同様の災害が起きたこともあります(代表的なのが阪神淡路大震災でした)。地震・津波・火山の噴火・土砂崩れなど、生活を脅かした痕跡も発掘により発見されることもあります。
 そして、何よりも重要なのは、私たちの先人の生活を知り、現代の生活と結びつけることで、我々の将来を考えることです。「温故知新」の言葉を借りれば「考古学」は「考現学」であり「考新学」ともいえるかもしれません。また、そうありたいと思っています。

【町史執筆委員 木村浩一】

『広報なみおか』平成14年(2002)7月1日号に掲載


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