なみおか今・昔71

なみおか町史コラム(1)

〜町史へ庶民史〜

 『浪岡町史』の中に私たち庶民の生活史が組み入れられることになったが、これを研究対象にした学問が民俗学である。この学問は、明治40年代に柳田国男の提唱によって始まり、昭和10年(1935)に民俗学会として活動を積極的に進めるようになった。この新出の民俗学を町史に取り入れていることは、高く評価されていいと思う。そして農民などの一般の人たちの生活の変遷が、町史の中に収められるということは非常に興味が持てるところである。
炭焼きの様子
多くの人たちに体験してほしい炭焼き
茅屋根の葺き替えの様子
茅屋根の葺き替え(写真道具:サッテ)
 今まで町内各地区で生活史の聞き取りを行って、多くの人たちのすばらしい知恵や技を調査してきているが、それが町史の内容を豊かなものにしてくれるものと確信している。
 例えば、衣生活では手作りの着物、わら細工など物を作る優れた技を披露してもらうこともあった。同じたぐいのものは旧坪田家住宅(中世の館隣接)の中に展示されてある。
 また、食生活では餅搗き、カデママ、自家製のソバキリ、大正2年(1913)の凶作時の食物、米を蓄えておく郷蔵、美味な漬物の漬け方、味噲造りなど現在行われていないようなものについていろいろと調べることができた。
 住生活については、アカ(赤)水の苦労、昔の家の間取り、ランプやカンテラ、電灯がついたころの話など沢山のことについて教えてもらった。しかし、最も特色のあるものとしては、茅屋根の葺き方について詳細にその技術を記録できたことである。
 北中野の屋根葺き職人長谷川喜代治(きよじ)氏が実際に屋根に上がって茅を手にしてマンガリ、サッテ、ハサミなどの道具を使って丁寧に説明して下さったことが印象的である。また、細野の山で炭焼きの技術を見聞したが、その物を作る妙味は是非とも多くの人たちに体験してほしいと勧めたいところである。
 民俗関係の記述は、さらに社会生活、信仰、人生儀礼、年中行事、口承文芸などの分類項目にわたって展開されている。その内容は、町民からの聞き取りが中心になっており、多くの町民の生活史が随所に資料として盛り込まれることになる。
 多くの町民が話者となって、町全体の生活の歴史を書き上げるところに民俗学が存在するのである。

【町史編集委員 三浦貞栄治】

『広報なみおか』平成13年(2001)5月1日号に掲載


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