あおもり今・昔/最終回−自然よもやま話−

ムラサキイガイ(シウリ)の湾内侵入は?

 青森湾の岩礁地帯の波打ち際に目を向けると黒い二枚貝と、貝殻の表面が少し紫色がかった貝が見られる。黒いほうがムラサキイガイで、もう一つはムラサキインコガイである。
 このムラサキイガイはもともと青森湾だけでなく、日本にはいなかった二枚貝であると聞くと誰しもびっくりする。
岩場に付着しているムラサキインコガイとムラサキイガイ
▲岩場に付着しているムラサキインコガイとムラサキイガイ
 ムラサキイガイはホタテガイの養殖施設やいたる所に付着し、海の厄介者の一つにされているが、食べられる貝でもある。種類が同じかどうかは別として、ヨーロッパではムール貝と称し好んで食べられている。
 青森では、ムラサキイガイは「シウリ」と、ムラサキインコガイは「マルゴ」と言われ、特にシウリはよく食べられていた。もちろん以前ほどではないが、春の大潮の時にはムラサキイガイを採る人達を今でも見かけることがある。
 青森湾のムラサキイガイの記録を見ると1942年までの調査では登場していない。しかし、ある漁師の話によれば、「うちの親父が若い頃は、シウリを海から離れた所に住んでいる人の所に持って行き、リンゴをもらって帰ったもんだ」とのことである。この話の漁師の親父さんは元気でいれば百歳に近い。この話と前述の青森湾の記録を照らし合わせてみるとつじつまが合わない。およその年代ではあるが多分漁師の話の年代が確かで、今まで記録から推察されているよりももっと以前に青森湾に移入され、食用にされるようになったと思われる。確かな証拠が得られないものだろうか。
【自然部会執筆編集員 沼宮内隆晴】

※『広報あおもり』2005年3月1日号に掲載


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