およそ陸上の自然環境で、昆虫の見られないところは無い、といっても過言ではないほど、昆虫はあらゆる陸上環境に適応している。 青森市は行政都市・交通都市として発展してきた。海上交通の拠点としての青森市の地位は、今更述べるまでもない。この発展の原動力となった海には、どんな昆虫がいるのであろうか。 実はこうした昆虫たちも、海を苦手としているため、陸上の昆虫に比較すると種類は少ない。 単に砂地であれば良いものも多いので、砂浜に住むものはやや種類も多く、しばしば内陸でも見られることもあるといわれている。しかし、環境の変化に弱いため、現在の青森市では、これらの昆虫はほとんど見られない。
そうした昆虫で、最も大形のものはナギサスズで、別名ウミコオロギとも呼ぶ。大形といっても、成虫で10ミリ程度。ハネが無いため全く鳴かないが、形はコオロギそのもの。完全な夜行性で、昼には見つけることができず、夏の夜に懐中電灯を持って、消波ブロックの上を渡り歩くと発見できる。 県内では平成12年に、浅虫で初めて確認された。この暖流系のコオロギが浅虫に分布するのは、対馬海流が陸奥湾に流れ込んでいるためか。ひょうきんな鳴き声のツクツクボウシやヤブツバキが、西海岸と夏泊半島から青森市東部に分布することとも関連がありそうである。このコラムに生きた姿の写真を載せたいと思い、去年の夏に行った時には見つけられなかった。 この他にも、堤防などで見られる昆虫としては、フジツボに寄生するアシナガバエや、海草を食べるユスリカなどがある。青森県では未発見であるが、これらは北海道まで分布するものなので、青森市でも見つけたいと思っている。 【自然部会執筆編集員 市田忠夫】 ※『広報あおもり』2005年2月1日号に掲載 |