あおもり今・昔126

朝日山(2)遺跡

 細越・高田地区の丘陵部にある集落遺跡で、平成3〜15年に、青森変電所建設・県道青森浪岡線改良・東北新幹線建設などの事業に伴って、県埋蔵文化財調査センターが計約3万平方メートルを発掘調査しました。
 その結果、この遺跡が主に縄文時代と平安時代の複合遺跡であることがわかりました。
 縄文時代では、竪穴住居(6軒/中・後期)のほか、貯蔵穴や動物捕獲用の落とし穴・死者を埋葬した墓(約60基/晩期)が発見され、墓には木枠痕や遺体にかけた赤色顔料(ベンガラ)が残ったり、漆塗り容器(籃胎漆器(らんたいしっき))・耳飾り・ヒスイの勾玉(まがたま)などが副葬されたものもありました。このほかに、縄文の土器・石器・土偶なども発見されました。
伯牙弾琴鏡
▲伯牙弾琴鏡
 また、平安時代では、竪穴住居(200軒以上)のほか、溝・井戸・鍛冶場・畠・墓など発見されました。出土品には、土師器(はじき)須恵器(すえき)のやきものや、製塩土器・土製のふいご・鉄製品・木製品などもありましたが、特に注目されたのが銅鏡です。奈良〜平安時代初期に国内で作られた唐式鏡の一種「伯牙弾琴鏡(はくがだんきんきょう)」で、それまで関東〜九州で15面しか発見されていなかったものです。直径は約17センチメートルで、中央の鈕の右に鳳凰、下に蓮の葉を配し、左では中国戦国時代の琴の名手「伯牙」が竹林で琴を弾くという当時の隠者の理想郷を表現したもので、縁の銘帯には漢字20字以上が不明瞭ながら鋳出されています。本県ではそれまで、平安時代以前の古鏡は未発見でしたので、本県最古の鏡ということになります。
 また、井戸からは平安時代以降の小型木製のソリも発見されました。最近まで本県など雪国で使われていたソリに酷似したもので、そのルーツや当時の雪国の生活を知る上で注目されています。
 これらの貴重な出土品からもわかるように、この遺跡は津軽の縄文・平安時代の生活や文化を知る上で、大変貴重な資料を提供しました。
【考古部会執筆編集員 福田友之】

※『広報あおもり』2004年5月1日号に掲載


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