あおもり今・昔62−自然よもやま話−

新品種クルマザキキクザキイチゲ

 平成8年5月下旬、深沢温泉付近の湿地へザゼンソウの写真を撮りに行った。
 その帰りに、かねてから聞いていたシラネアオイの群落を探しに、大峠付近の山林に入っていった。見事なシラネアオイの群落を見つけ、何枚もカメラのシャッターを切った。その時、同行のH氏が風変わりな「キクザキイチリンソウ」を見つけた。花弁(のように見えるが実は萼片(がくへん))が多弁になっていて、オシベが全く無いのである。
新品種 クルマザキキクザキイチゲ
▲新品種 クルマザキキクザキイチゲ
オシベの弁化はよくあることなので、さして気にも留めず、一応カラースライドに記録し、仮に「ヤエザキキクザキイチゲ」としておいた。『新青森市史』の編さんまでに、必要ならば詳しく調べることにした。知人の植物愛好家の何人かには、カラースライドで紹介し、是非写真に撮りたいという希望者には生育地を案内した。
 ところが、平成10年10月号の植物研究雑誌(第73巻第5号)に、国立科学博物館植物研究部の門田裕一氏がこれと同じ植物について「キクザキイチゲの青森県産一品種、クルマザキキクザキイチゲ」という表題で発表しているのを知った。平成7年5月13日に下北郡大畑町の山林で発見されたという。
 同じ植物のことと思われる記事が、平成11年5月18日の毎日新聞の地方版にも載っていた。
 平成11年5月26日に大峠付近の山林に出かけ、シロバナクルマザキキクザキイチゲとも言うべき植物の写真を撮影した。
 珍しい植物は下北に多いように思われているが、青森市にもまだ未調査の植物がたくさんあるに違いない。
【自然部会執筆編集員 葛谷孝】

※『広報あおもり』2000年2月15日号に掲載


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