あおもり今・昔61−自然よもやま話−

初めて学会に紹介された青森の昆虫

 以前、青森市民で最初に科学的に昆虫を研究した人たちについて触れた。それは、1900(明治33)年に石江に設立された県農事試験場(大正2年に黒石に移転、現在の県農業試験場)で害虫研究に従事していた人たちであった。
 そこで今回は、近代の科学的な方法で世界に紹介された最初の青森の昆虫について述べてみよう。
クロジョウカイ
▲クロジョウカイ
 青森という地名が新種の昆虫の産地として初めて学会に紹介されるのは、私がこれまで調べた範囲では、今から126年前の1874(明治7)年、ドイツ人キーゼンヴェッターが、ベルリンの昆虫学会誌に発表した「クロジョウカイ」という15ミリメートル前後の黒いホタルに近い甲虫であろう。この標本は次に述べるルイスがヨーロッパに持ち帰ったものである。
 英国人ジョージ・ルイスは、茶の貿易商を営むかたわら、日本各地で昆虫の採集・収集を行った。ルイスは1869〜1871年と、1880〜1881年の2回来日している。
 2回目来日時の日程は詳しく知られていて、1880(明治13)年8月30日〜9月8日、10月10日〜13日にかけて青森県に滞在した。青森市内では、田代、八甲田、浅虫などを訪れている。クロジョウカイは第1回来日時の標本であるが、残念ながらこの時の日程は詳細ではない。
 ルイスの採集した青森産の昆虫は、イギリス内外の専門家により研究され、1ダースあまりの新種として発表されている。その中でも、「キタ(マイマイ)カブリ」と「ハネビロアカコメツキ」はルイス自身によって発表され、青森を原産地とする、ともに大変美しい甲虫である。
【自然部会執筆編集員 市田忠夫】

※『広報あおもり』2000年2月1日号に掲載


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