あおもり今・昔57−自然よもやま話−

青森平野と地下の水

 ずっと昔から八甲田は、恵みの山として青森市民に多くの恩恵を与えてきました。そのひとつが水です。
 春夏秋冬の雨、雪、みぞれは、この八甲田に()みこんで、地下水を透しにくい岩盤の上と、地下水を透しやすい地下水層の中を通り、青森平野の地下に降りてきました。その後市街地の地下を通過して、青森湾の底の下、透水性の地層に押し込まれていきます。千年も一万年も、いやもっと古くから今日まで続いてきたのです。
 戦前、新町通りの松木屋デパートの角にきれいで冷たい水が、こんこんと湧いているところがありました。40平方センチメートルくらいの木の枠で囲われた、深さが30センチメートルほどの槽で2槽ありました。これは掘り抜き井戸です。夏の暑い日に限らず、市民も近在の人たちも、また、馬の背に荷物を積んで町に商いなどにやってきた人たちも、このおいしい水を飲んで、ひと休みをする風景がよく見られました。近所に住んでいた版画家の棟方志功さんも小さいころよく飲んでいたと言われています。
八甲田は青森市民の恵みの山
▲八甲田は青森市民の恵みの山
 善知鳥(うとう)神社の本殿後ろの沼にも地下水が自噴しているところがありました。水圧を受けて噴き出た被圧地下水です。中国からの技術を日本人が古くから改良を重ねてきた上総(かずさ)掘りという方法で掘ったものです。
 青森平野は、善知鳥の森と安方(潟)に囲まれた湾が、八甲田などから運び込まれた土砂で埋められてできた湿地帯なので、すぐ地下水が湧き、市民は飲み水に不自由しませんでした。
 また、温泉国日本において青森県は面積に比べて温泉の数が非常に多くあります。青森市のボーリング温泉の第1号は石油探査の副産物で噴出した鶴ヶ坂温泉です。また、温泉目的のボーリング第1号温泉としては、平野の東南にある戸山温泉で、この温泉は青森県の第1号でもあったのです。平野内の温泉水は、八甲田火山の土台を作る岩盤と連続する岩の割れ目を充填(じゅうてん)している水が、地熱で熱くなったものです。
 このように青森平野の地下水は、私たちの生活と切っても切れない関係にあります。
【自然部会執筆編集員 塩原鉄郎】

※『広報あおもり』1999年12月1日号に掲載


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