あおもり今・昔56−自然よもやま話−

青森市のシナイモツゴ

 「シナイモツゴ」といえば、どこかで聞いた名前だと思われるかたもいるのではないでしょうか。青森市内のいくつかの溜池(ためいけ)に生息している、小型でどちらかというと目立ちにくい魚です。今年の2月に出た環境庁のレッドリストでは「絶滅危惧種1B類」に位置付けられています。ちなみにメダカが「絶滅危惧種2類」ですから、シナイモツゴはメダカより絶滅が心配される魚ということです。
 シナイモツゴが絶滅の淵に追い詰められたのにはいくつかの理由があります。
シナイモツゴ
▲シナイモツゴ
 まず、近縁の魚種のモツゴ(関東でいう「クチボソ」)の各地への移入です。モツゴが移入された場所では、次々にシナイモツゴが駆逐されてしまいました。シナイモツゴとモツゴの交雑(別の種の雌と雄をかけあわせること)が行われ、その稚魚は発育はするが不妊になる、ということが確認されています。現在、津軽平野で見られるのは、調べた限りでは全てモツゴでした。
 最近、シナイモツゴにとってもう一つの敵が現われました。シナイモツゴを食べてしまう外来の魚食魚オオクチバス(通称ブラックバス)です。違法承知でオオクチバスの密放流を行う人間こそがシナイモツゴを絶滅に追い込む敵だというのが正確でしょう。青森市のシナイモツゴについては、市民有志が熱心に保護に取り組んでいますが、決して将来は明るいわけではありません。日本列島の中で長い時間、人と共存してきた魚たちが、たかだか10年くらいの間に人の手によって次々に絶滅に追い込まれていくことは異常な事態だと言わねばなりません。
【自然部会執筆編集員 佐原雄二】

※『広報あおもり』1999年11月15日号に掲載


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