あおもり今・昔49−自然よもやま話−

青森湾・陸奥湾の底が地表であったころ

 氷河時代には、南極や北極だけでなく、そこに近い大陸にも氷がたくさんできて、世界中の海水の量も雨の量も減ってしまいました。そのため、海水面もずっと低くなり、今から1万2千年前の青森湾・陸奥湾の水面は、現在よりおよそ40〜45メートルも下がっていたと考えられています。現在二つの湾はともに深さが40〜45メートルですから、当時はすっかり陸地と化していたのです。
今から1万2千年前の地形
▲今から1万2千年前の地形
この湾を取り囲む下北半島の山々、八甲田山などからの谷や川は、土砂をここに運び込んで全部埋めつくし、さらに下北半島と津軽半島の間の平舘海峡に狭くて深い谷を作り、津軽海峡に流し出したのです。今もその海峡が海底に残っています。湾内の土砂で埋められただけの地表面には、高い山もできず、植物の繁った広い広い平野で、動物たちも元気にかけまわっていたことが想像されます。
 この後、暖かくなり、氷河も溶け、海水面が上昇し、海が青森平野にも入り込み、山ぎわまで海岸線を押し上げました。今、話題になっている三内丸山遺跡もこの海辺の集落だったといえます。6千年で50〜60メートルあがった海水面は、この後また6千年かけて6メートルほど下がり、今のような湾のかたちを造り上げました。
 青森湾・陸奥湾の底が地表であったころの動物たちの生活の跡は海底に眠っています。ひょっとしたら海底から、その時代の遺跡や遺物が見つかるかも知れません。
 今はまだ確認されていませんが、いろいろと想像をめぐらしてみることも楽しいことです。
【自然部会執筆編集員 塩原鉄郎】

※『広報あおもり』1999年8月1日号に掲載


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