あおもり今・昔45−自然よもやま話−

水ぬるむころのプランクトン

 春が近くなったことがほんの少し感じられるようになる3月に、浅虫周辺の海に毎年現れる浮遊生物(プランクトン)があるが、その一つにヒトツアシクラゲというクラゲがある。
 大きさは3ミリメートルほどの小さなクラゲで、波の静かな日に目を凝らしてじっと水面を見ていると、頼りなさそうに泳いでいるのが肉眼でもわかる。
ヒトツアシクラゲ
▲ヒトツアシクラゲ
 これをすくい上げ、海水と一緒に小さな入れ物に入れると、なるほどクラゲであることがよくわかり、虫眼鏡(むしめがね)で観察すると一層その可愛らしさが目につく。時には、クラゲがもう一つの小さいクラゲをつけていることもある。
 クラゲの専門家の間では古くから、このクラゲはクラゲが芽を出してまたクラゲを造ることで知られている。浅虫周辺の海でも3月になると出現することは1927年に記されているが、このクラゲは記載されるずっと以前から同じように出現していたはずである。
 季節毎に出現するプランクトンは沢山の種類があるが、全く見かけなくなった海の生き物も少なくないこのごろ、毎年3月に出現するヒトツアシクラゲや他のプランクトンが、最初に記録されたころと同じ時期に今も出現していることにはホッとさせられる思いがする。
 しかし、海岸線を眺めても、海の中を覗いてみてもむつ湾が1927年ごろと同じ状態であるなどとは考えられないし、誰しもそうは思ってはいない。いつまでこのプランクトンなどが見られるのか不安な気持ちを持ちながらも、いつまでも変わらない海であって欲しいと願わずにはいられない。
【自然部会執筆編集員 沼宮内隆晴】

※『広報あおもり』1999年6月1日号に掲載


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